“Gish Note”はDieSixxの映画評だけをまとめたブログです。

2024-07-01から1ヶ月間の記事一覧

第316位『血槍富士』(内田吐夢)

Bloody Spear at Mount Fuji/1955/JP 幕府に茶器を献上するため、東海道を旅している若様と槍持ち、お供の一行。槍持ちに憧れる身寄りのない少年や旅芸人の母娘も交えながら、和やかなロードムービーが進行していくが、終盤は橋本忍脚本の時代劇に通じる陰惨…

第317位『ロボット』(シャンカール)

Robot/2010/IN 今でこそ、国内で一定数が公開され、ストリーミングサービスでも供給されるようになったが、『ロボット』が日本公開された2012年ごろは、インドがアメリカをしのぐ世界一の映画量産国であることを知っていても、その実態を知る機会は少なかっ…

第318位『夜の人々』(ニコラス・レイ)

They Live By Night/1948/US ニコラス・レイの長編第1作は、フィルムノワールとも、アウトローカップルものとも形容されがちだが、実際はシンプルでうつくしいラブストーリーだ。「この青年と少女は、私たちの暮らす世界に正しく紹介されていない」という冒…

第319位『バロン』(テリー・ギリアム)

The Adventures of Baron Munchausen/1988/UK 初めて触れたのはフジのゴールデン洋画劇場だったか。『未来世紀ブラジル』の悪夢的ビジョンから離れて、娘のための映画を、と意気込んだだけあって、リッチな画面と愉快な登場人物、物語論的な知性にもあふれた…

第320位『わらの犬』(サム・ペキンパー)

Straw Dogs/1971/US サム・ペキンパーについては、伝え聞く限りの人間性も、作品が表象している哲学も、もっといえばペキンパーを好む男性映画ファン(文化系なのに根がマッチョなおじさん ※個人の見解です)が相当苦手なので、できれば遠ざけておきたい。『…

第321位『光る眼』(ジョン・カーペンター)

Village Of The Damned/1995/US 一般的にジョン・カーペンターのフィルモグラフィーの中で、『光る眼』は凡作と評されることの方が多いとおもう。傑作『遊星からの物体X』と同じくSFホラー映画のクラシックをリメイクした本作は、クリストファー・リーヴ…

第322位『キング・コング』(メリアン・C・クーパー、アーネスト・B・シュードサック)

King Kong/1933/US 現代まで連綿と続く特撮怪獣映画の金字塔。本作に感動した円谷英二が、コスト面からストップモーションを諦め、着ぐるみによる表現を確立したのは有名な話。私はどちらかというと着ぐるみ特撮の方が好きなんだけど、大人になるとストップ…

第323位『ひまわり』(ヴィットリオ・デ・シーカ)

Sunflower/1970/IT-FR-SU-US 俳優としてキャリアを積んだのち、ネオレアリズモの旗手として鳴らし、その後はソフィア・ローレン、マルチェロ・マストロヤンニのコンビによる通俗的なロマンティック・コメディで大衆の心を掴んでいったデ・シーカ。『ひまわり…

第324位『奥様は魔女』(ルネ・クレール)

I Married a Witch/1942/US 戦時中、フランスから渡米していたルネ・クレールがハリウッドで手がけたロマンチックコメディ。同名テレビドラマの原点とされるが、直接の関係性をうかがわせる描写はなく、内容もかなり異なっている。17世紀に火あぶりにされた…

第325位『フェイズⅣ 戦慄!昆虫パニック』(ソウル・バス)

Phase Ⅳ/1974/US 映画史に残るタイトルデザインの数々で鳴らしたソール・バスだが、唯一の監督作である『フェイズⅣ』のタイトルクレジットは、えらく簡素で控えめである。しかし、アリたちが集団で知能を持つようになり、人間を支配するようになるというプロ…

第326位『砂塵』(ジョージ・マーシャル)

Destry Rides Again/1939/US 西部の町・ボトルネックは、イカサマギャンブルで人々から財産を巻き上げ、文句を言う人は銃と暴力で解決するケント一味に牛耳られ、無法地帯と化していた。ケントと内通する町長は、飲んだくれで役立たずのウォッシュを公認保安…

第327位『ザ・カー』(エリオット・シルヴァースタイン)

The Car/1977/US 西部の田舎町で正体不明の殺人自動車が人々を襲う『激突!』と『ジョーズ』を露骨に接合したオカルトスリラー。チャーチ・オブ・サタンのアントン・ラヴェイの引用句に始まり、全編に「怒りの日」が流れ、ヨハネ黙示録のモチーフがちりばめ…

第328位『僕の彼女はどこ?』(ダグラス・サーク)

Has Anybody Seen My Gal?/1952/US メロドラマの巨匠ダグラス・サークが手がけた軽妙なミュージカルコメディ。私が20代だった2000年代後半、サークの特集上映やDVD化が活発化し、なかなか見ることができなかった作品群をまとめて見る機会に恵まれた。『僕…

第329位『前世紀探検』(カレル・ゼマン)

Journey to the Beginning of Time/1955/CZ チェコアニメの巨匠カレル・ゼマンがストップモーションアニメと実写を初めて本格的に組み合わせた長編映画。一般的にゼマンの代表作といえば『悪魔の発明』や『彗星にのって』などジュール・ヴェルヌ原作の映画化…

第330位『レディ・ハード/香港大捜査線』(コリー・ユン)

Yes, Madam!/1985/HK ミシェル・ヨーの記念すべき主演第1作(ミシェル・カーン名義)。サモ・ハンやツイ・ハークも出演しているが、あくまでコメディリリーフで、ミシェル・ヨーと格闘家出身のシンシア・ラスロックの女性コンビがアクションを引っ張る。あま…

第331位『ベニスに死す』(ルキノ・ヴィスコンティ)

Death in Venice/1971/IT-FR-US 夏のヴェネチアを舞台に、生と死、美と醜、若さと老いを鮮烈に対比した名作。ヴィスコンティは、映画史上最高の美少年ビョルン・アンドレセンをフィルムに焼き付けた一方で、彼への許されざる性的搾取を告発されており、今と…

第332位『哀愁の湖』(ジョン・M・スタール)

Leave Her To Heaven/1945/US ジーン・ティアニーが氷のように美しく、炎のように情熱的な悪女を演じるテクニカラーのフィルムノワール。重度のエレクトラ・コンプレックスに取りつかれたエレン(ティアニー)が、欲求不満と嫉妬にさいなまれ、自らの愛を阻…

第333位『バーバレラ』(ロジェ・ヴァディム)

Barbarella/1967/FR ロジェ・ヴァディムが当時の愛妻ジェーン・フォンダを世界に自慢するために撮ったキッチュなお色気SFコメディ。オープニングクレジットの無重力ストリップを、小学生のころたまさか目にしたときは、「なんだこれエロすぎる!」と度肝を抜…

第334位『ティタシュという名の河』(リッティク・ゴトク)

A River Called Titas/1973/BD 第三世界を中心に各国の重要な映画作品をアーカイブするためにマーティン・スコセッシが立ち上げた「World Cinema Project」の一環で、修復されたバングラデシュ映画。リッティク・ゴトクは、サタジット・レイと同時代のベンガ…

第335位『白い足』(ジャン・グレミヨン)

Pattes Blanches/1949/FR フランス映画でしばしば見られる「田舎地獄」の系譜のひとつと言えようか。舞台となる港町は、古城に住む貴族の好色と不貞により、村全体が「きょうだい」であるかのような閉鎖的で不健康なコミュニティーとして描かれている。貴族…

第336位『呪いの家』(ルイス・アレン)

The Uninvited/1944/US 元祖幽霊屋敷映画。もちろん『たたり』や『回転』より先だが、まだ恐怖映画というジャンルが確立されておらず、幽霊の正体をめぐるミステリーやロマンチックコメディとしての色合いが濃い。同時代のフィルムノワール的なタッチの画面…

第337位『ショーガール』(ポール・ヴァーホーベン)

Showgirls/1995/US 数々のワースト映画賞を総なめにした、ある意味でポール・ヴァーホーベン監督の代表作。前作『氷の微笑』でのあけすけな性描写を発展させた上に、ほとんどセックスそのものがテーマになってしまった結果、めちゃめちゃ金のかかった東映ピ…

第338位『黄色いからす』(五所平之助)

Yellow Crow/1957/JP 終戦から数年がたって、ようやく復員した父親と息子が、おずおずと遠回りしながら空白を埋める再生ドラマ。生まれて一度も会ったことのない父親との関係に戸惑う息子。息子との関係を築きたくとも、大きく変わってしまった日本社会につ…

第339位『シャドー』(ダリオ・アルジェント)

Tenebre/1982/IT イタリアンホラーの巨匠、ダリオ・アルジェントが、『サスペリア』『インフェルノ』に続く「魔女三部作」の完結編に頓挫し、久々にジャッロ路線に回帰。オカルト要素はなく、トラウマを抱えた真犯人の主観ショットやフラッシュバックを織り…

第340位『デッドプール2』(デヴィッド・リーチ)

Deadpool 2/2019/US 3作目の公開も控えるマーベルコミックのスーパーヒーロー映画2作目。90年代に登場した比較的〝若手〟で、コミックファンの間では高い人気を誇るトリックスター的キャラクターだったデップーだが、2016年の1作目公開後は屈指の人気と知…

第341位『第9地区』(ニール・ブロムカンプ)

District 9/2009/US-NZ 南アフリカ出身ニール・ブロムカンプ監督の長編デビュー作。公開当時は、同時期のジェームズ・キャメロン監督の3D超大作『アバター』と比較されることが多かった。典型的な白人酋長ものであった『アバター』に対し、アパルトヘイト時…

第342位『セリーヌとジュリーは舟でゆく』(ジャック・リヴェット)

Céline and Julie Go Boating/1974/FR ヌーヴェルヴァーグの中心的人物として理解されるジャック・リヴェットだが、映画を監督の作品として説明することに強い嫌悪感を示すなど、一派の「作家主義」とは明確に距離を置いていた。キャストとスタッフが同じ時…

第343位『堕靡泥の星 美少女狩り』(鈴木則文)

Star Of David:Hunting For Beautiful Girls/1979/JP 東映の売れっ子監督だった鈴木則文が、にっかつロマンポルノで唯一撮った一作。予算も上映時間も、通常のロマンポルノと比べると大作といっていい規模である。佐藤まさあきの原作を、大和屋竺が脚色。呪…

第344位『エイリアン4』(ジャン=ピエール・ジュネ)

Alien: Resurrection/1998/US ジャン=ピエール・ジュネのハリウッド進出作。マルク・キャロとのコンビを解消し、次作『アメリ』で花開くポップなセンスが頭角を表す。ジュネは、前作で惨憺たる結果となったデヴィッド・フィンチャーの轍を周到に避けながら…

第345位『月は上りぬ』(田中絹代)

The Moon Has Risen/1954/JP 田中絹代の監督第2作。脚本は小津安二郎で、カメラワークや台詞回しに強く影響を感じさせる。一方でガールズムービー的なみずみずしさを随所にたたえている。ぺちゃくちゃと喋りながらストッキングを脱いだり、彼氏に毛糸を持た…