“Gish Note”はDieSixxの映画評だけをまとめたブログです。

『オーディション』(三池崇史)

Audition/1999/JP 三池崇史監督の国際的な評価を決定づけた『オーディション』が英アロービデオでBlu-ray化された。見返すと、あらためて物語のせつなく、はかないメロドラマ性にうたれる。クライマックスにおける目をそむけたくなるような激痛シーンと、過…

『シェラ・デ・コブレの幽霊』(ジョセフ・ステファノ)

"The Ghost of Sierra de Cobre"1964/US 長らく「幻の映画」だった『シェラ・デ・コブレの幽霊』が、今年ついにアメリカでソフト化された。私も迷うことなく入手したが、世界中のシネフィルや映画マニアが長年恋い焦がれていた映画が、ついに自宅に届いたと…

『影なき淫獣』(セルジオ・マルティーノ)

"I Corpi Presentano Tracce di Violenza Carnale"1972/IT ジャッロと呼ばれるイタリア製スリラーは、マリオ・バーヴァ、ダリオ・アルジェント、セルジオ・マルティーノ、ウンベルト・レンツィ、ルチオ・フルチなどが放った個性的な作品群で、ジャンルとして…

『蠅の王』(ピーター・ブルック)

"Lord of the Fries"1963/GB ウィリアム・ゴールディングの傑作小説「蠅の王」を読んだのは中学生のとき。どこで目にしたのかは忘れたが「暗黒版『十五少年漂流記』」とかいうふれこみに惹かれ、手に取ったおぼえがある。少年漂流ものの系譜に位置する作品な…

『フランケンシュタインの怪獣 サンダ対ガイラ』(本多猪四郎)

"The War of the Gargantuas"1966/JP-US クエンティン・タランティーノやブラッド・ピットら多くの映画人がファンを公言し、最近では諫山創の漫画「進撃の巨人」に影響を与えたことでも知られる『サンダ対ガイラ』は、日本のみならず、世界のポップカルチャ…

『フランケンシュタインの怪獣 サンダ対ガイラ』(本多猪四郎)

"Frankenstein Conquers the World"/1965/JP-US 東宝怪獣映画で初めてアメリカと合作した本作は、20世紀フォックスが東宝に持ち込んだ「キングコング対フランケンシュタイン」という企画が基になっている。「アメリカの二大怪物のドリームマッチを、『ゴジラ…

『牯嶺街少年殺人事件』(エドワード・ヤン)

A Brighter Summer Day/1991/TW かれこれ10年以上恋い焦がれていた『牯嶺街少年殺人事件』をスクリーンで見ることができた。私がこの映画の存在を知ったのは、エドワード・ヤン監督が亡くなった時期とあまり変わらない。権利関係で再上映やDVD化がかな…

『怒りの日』(カール・テオドア・ドライヤー)

Vredens Dag/1943/DK 2008年、国内の上映権切れに伴って、カール・ドライヤー監督の5本の長編映画が最終上映された。『裁かるるジャンヌ』(1927)、『吸血鬼』(1932)、『怒りの日』(1943)、『奇跡』(1954)、『ゲアトルーズ』(1964)という、今考えても垂涎の…

『キャリー』(ブライアン・デ・パルマ)

Carrie/1976/US 私が通っていた中高一貫の私立校では、中学までが男子校で、高校に上がると少数の女子が入り共学化した。私は高校進学後も男子クラスだったので、結局女子と会話ができたのは中高6年間で数えるほどしかなかった。こうした経験はその後の私の…

『悪魔のいけにえ』(トビー・フーパー)

The Texas Chain Saw Massacre/1974/US あまり怖いものが得意ではない恋人が『悪魔のいけにえ』の爆音上映に付き合ってくれた。「ほんとうに大丈夫?」と何度か念押ししていたけれど、見終わったあとは案の定青ざめた表情で「怒らないで聞いてほしいんだけど…

『キャット・ピープル』(ジャック・ターナー)

"Cat People"1942/US RKOスタジオが、演劇界の風雲児オーソン・ウェルズを招き、製作した2本の映画(『市民ケーン』、『偉大なるアンバーソン家の人々』)は映画史上の財産にはなったが、肝心かなめの撮影所の経営状況を救うことはできなかった。それど…

『ブレックファスト・クラブ』(ジョン・ヒューズ)

The Breakfast Club/1985/US バーノン先生、僕たちがせっかくの土曜日に登校を命じられたのは当然の報いだと思います。僕たちは間違いを犯しました。でも自分とは何かという作文を書けだなんてばかげています。意味がありません。先生は色眼鏡で僕らを見て、…

『ラブ&ポップ』(庵野秀明)

Love & Pop/1998/JP 今ふりかえってみても、1990年代は暗かったなあとおもう。「失われた10年」とかたいそうな位置付けはわからなかったけれど、社会の閉塞感と大人たちの疲弊を子どもながらに肌で感じた。阪神大震災と地下鉄サリン事件、『完全自殺マニュ…

『ローラ』(ジャック・ドゥミ)

Lola/1961/FR 『ローラ』はジャック・ドゥミ監督の長編第1作だ。ドゥミと聞くと『シェルブールの雨傘』や『ロシュフォールの恋人たち』に代表されるめまいがするような色彩感覚と甘いメロディーに彩られたミュージカル映画を思い起こす人も多いとおもう。『…

『魔女の宅急便』(宮崎駿)

Kiki's Delivery Service/1989/JP草原に寝そべって、ラジオの天気予報に耳をすます一人の少女がいる。今夜は満月でよく晴れるらしい。不意に立ち上がった少女は並々ならぬ決意を胸に駆け出す。出発は今夜しかない。 『魔女の宅急便』は思春期の少女の目の前…