Star Of David:Hunting For Beautiful Girls/1979/JP
東映の売れっ子監督だった鈴木則文が、にっかつロマンポルノで唯一撮った一作。予算も上映時間も、通常のロマンポルノと比べると大作といっていい規模である。佐藤まさあきの原作を、大和屋竺が脚色。呪われた出自を持つ青年、神納達也が人間の悪徳を証明するため、暴虐の限りを尽くす。原作者が自らの昏い欲望を注ぎ込んだ作品哲学が、鈴木の映像文体によって驚くべき大衆性を獲得してしまっている。
ロマンポルノを初めとする成人映画を見ていると、映画としていくら面白くても肝心の濡れ場で、作品が停滞してしまうという本末転倒な現象がよくあるが、本作では一瞬たりともテンションが弛緩することはなく、観る者の悪魔的な欲望を刺激してくる。冒頭、飛鳥裕子が犯されるシーンでは、ラジオから当時皇太子だった平成天皇成婚のニュースが流れ、主人公の忌まわしい出自と日本中から祝福される夫婦とのコントラストが示される。その後も八城夏子、小川亜佐美など豪華な出演陣が次々とひどい目に遭わされるが、いずれも美しく、扇情的に撮られている。明るく、健康的な東映のエロとは明らかに違い、インモラルで陰湿な官能描写に並々ならぬ気合を感じる。生涯にわたり、大衆娯楽映画を作り続けてきた鈴木が、ナチズムに傾倒し、大衆を嫌悪する青年を主人公とするとこで、どこかタガの外れたような異様なテンションの映画になった。
手だれの俳優陣で固めているが、主演の土門峻とヒロインの波乃ひろみは、いずれもほぼ無名の新人を起用し、独特な存在感を放っている。波乃は元ミス日本で、良家の令嬢だったといい、乗馬姿も様になり、本質的な育ちの良さがある。どちらも魅力的な俳優だったが、残念ながら本作以降あまり活躍しなかった。