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第179位『ピショット』(ヘクトール・バベンコ)

Pixote/1981/BR

ブラジルの名匠、バベンコがスラムキッズの生活に取材したハードコアな『大人は判ってくれない』。主人公のピショットをはじめ、子どもたちのキャスティングには本当のストリートキッズたちが起用されていて、映画制作という仕事を通じて彼らを救済する目的もあったのかもしれない。ただピショットを演じたフェルナンド少年は、19歳で警官に射殺され命を落としている。

映画は非常にわかりやすい三幕構成で、一幕目は少年院での虐待と腐敗、搾取にまみれた過酷な生活、二幕目は脱走した4人のストリート生活、三幕目は娼婦スエリの元に身を寄せ、美人局をしながら共同生活を送る様子が描かれる。いずれも子どもたちを利用し、搾取するだけのろくでなしばかりの大人の中で、娼婦スエリと子どもたちの奇妙な絆は印象的。スエリに母性を見出したピショットが拒絶され、またひとり早朝の線路を歩くラストシーンは、その後の演者の人生もあいまって、胸に迫る。