The Car/1977/US
西部の田舎町で正体不明の殺人自動車が人々を襲う『激突!』と『ジョーズ』を露骨に接合したオカルトスリラー。チャーチ・オブ・サタンのアントン・ラヴェイの引用句に始まり、全編に「怒りの日」が流れ、ヨハネ黙示録のモチーフがちりばめられるなど劇中の殺人自動車は、明確に悪魔の化身として演出されている。宗教的なテーマ設定と、自動車というあからさまに即物的なモチーフのちぐはぐさが、本作の弱点でもある。公開時の評判は散々で、現在でも駄作と切り捨てる向きはあるが、70年代の映画ならではの香りにあらがいがたい魅力があるのも事実。
リンカーンコンチネンタルを改造した黒塗りの殺人自動車の存在感は重厚かつまがまがしいが、ヒロインにあおられるとブンブンとエンジン音を響かせて怒り狂うなど可愛いところもある。その後も、『クリスティーン』、『処刑ライダー』、『デス・プルーフ』など自動車を使ったホラー映画は作られ続け、ジャンルの嚆矢にもなった。