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第326位『砂塵』(ジョージ・マーシャル)

Destry Rides Again/1939/US

西部の町・ボトルネックは、イカサマギャンブルで人々から財産を巻き上げ、文句を言う人は銃と暴力で解決するケント一味に牛耳られ、無法地帯と化していた。ケントと内通する町長は、飲んだくれで役立たずのウォッシュを公認保安官に任命する。

みんなから馬鹿にされているウォッシュは悪を一掃したいと一念発起し、腕利きの保安官の息子であるトム(ジェームズ・ステュアート)を助手として呼び寄せるが、トムは普段から銃を持たず、法律を重んじる若者だった。当初は住民から軽んじられていたトムだが、冷静な捜査と法知識に基づく交渉により着実にケントを追い詰めていく。
ケントの愛人であるマレーネ・ディートリヒがヒロイン的立ち位置だが、冒頭から酒場で男たちをあしらいつつ、イカサマポーカーに手を貸す魅力的な悪女ぶりを発揮。主人公のトムが妻帯者という設定も一風変わっている。
町の無法者たちが所構わず銃をぶっ放しまくる前半は、かなり騒々しいコメディ。ディートリヒもトムの妻と酒場で殴り合ったりとやりたい放題だが、トムの誠実で高潔な人柄に、少しずつ惹かれていくディートリヒと共振するように、ドラマも徐々に洗練の度合いを増していく。このあたりはジェームズ・ステュアートの存在感が利いている。
やがて決定的な悲劇が起こり、トムがついにホルスターを取りに向かう並行移動。それぞれ武器を手にした女たちが酒場に乗り込み、マキノ時代劇さながらの大乱闘が展開。そして、ラストのキスシーン(指で口紅をぬぐうディートリヒの所作が美しい)に至るまで、アメリカ映画の豊かな感動がこれでもかと収められている。