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第311位『二人の修道士』(フアン・ブスチーオ・オーロ)

Two Monks/1934/MX

メキシコ映画の古典で、マーティン・スコセッシ主催のアーカイブプロジェクトの中で発掘、修復された。ひとりの女性を愛したふたりの男が、それぞれ異なる過去を語るという『羅生門』的な物語が展開。語り手によって男たちの着ている服の色が逆転したりと、それぞれの「主観」が強調されているが、片方の回想シーンはドイツ表現主義の影響を色濃く受けた画面構成により、それとなく不安定な精神状態が暗示されている。

 物語は陳腐でテンポもやや悪いが、創意工夫を凝らしたショットが連続して飽きさせない。ただ本作の挑戦が、その後のメキシコ映画界に引き継がれることはなかったようだ。オーロ自身も保守的なメロドラマやコメディの量産へと回帰していき、本作が再評価されたのは1970年代に入ってからという。