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第349位『Pearl パール』(タイ・ウェスト)

Pearl/2022/US

タイ・ウェストとミア・ゴスが組んだスラッシャー映画3部作の2作目。70年代を舞台に『悪魔のいけにえ』を下敷きとした前作『X』で大活躍した老女シリアルキラー、パールの前日譚が描かれる。舞台は1918年だが、ルックは40〜50年代の黄金期のハリウッド映画を再現。テクニカラー調の画面の中で、スターを夢見るパールが、クラシカルな演技で生き生きと躍動する。
 ダグラス・サーク的なホームメロドラマのトーンで、シリアルキラーのプリクエルを描くというワンアイデアだが、細部へのこだわり(タイトルロゴの微妙な揺らぎ!)やミア・ゴスの存在感により、恐ろしくも、哀しい、切実なほどに滑稽な青春物語に結実した。誰もが記憶に残るであろう戦慄のラストカットは、映画史に刻まれるクローズアップとなった。人間の笑顔が、こんなに多様で豊かな感情を表現しうるのかと改めて驚かされる。現時点では最終作の「MaxXxine」が公開前だが、すでに評価が確定した2作目といえそう。