The Parallax View/1974/US
政界人を秘密裏に組織的に暗殺する民間企業が、アメリカ社会を裏で牛耳っているとしたら―。現代の視点から見るとやや陰謀論者めいたプロットだが、公開当時のアメリカは、ウォーターゲート事件に揺れに揺れていたわけで、それなりのリアリティを持っていたはずだと推察される。アラン・J・パクラは、『コールガール』(1971)で獲得した冷徹かつ硬質なドキュメントタッチを駆使し、荒唐無稽な絵空事を現実味を帯びたビジョンとして構築してみせた。この習熟が、まさしくウォーターゲート事件とする代表作『大統領の陰謀』(1976)へと結実する。
次期大統領候補の暗殺事件が起き、過激な愛国者による犯行と断定される。だがその後、当時の現場に居合わせた目撃者が次々と不審な死を遂げていく。ウォーレン・ベイティ演じる新聞記者が、かつての恋人で記者仲間の死をきっかけに、取材をするうちに「パララックス・コーポレーション」という企業に行き当たり、潜入捜査を開始する。受験者の内なる暴力性と倫理観を引き出すようなパララックス・コーポレーションの「入社試験」は、今見ても不気味な説得力を持つ。『リング』の「呪いのビデオ」などと比べるとすいぶん牧歌的ではあるが…。パララックスの核心に迫るかと思いきや、結局全てが見透かされ、シナリオ通りだったという結末も、この時代の映画ならではの苦い後味。劇的なシーンほど、超ロングショットで突き放すパクラの「盛り上げすぎない」演出にもしびれる。