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第30位『斬る』(三隅研次)

Destiny's Son/1962/JP

スジ、ヌケ、ドウサの全てが極限まで削ぎ落とされたほぼ完璧な映画。全ての始まりとなる女による女殺しをバックに「斬る」のタイトル。エモーションを排した叙事的な筆致で描かれる剣士の数奇な生涯。ぜい肉は一切なく、観客の感情移入を許さない。統御された映像美で、武家社会に生きる人々をネイチャードキュメンタリーのように淡々と語る。
ふと豊かな情感が湧き立ち、安らぎを与える茶室の場面も束の間、冷酷非情な結末へと突き進んでいく。何度見ても、いや、見れば見るほど息を呑む、『子連れ狼』と対をなす三隅時代劇の頂点。

物語中で主人公にある種の「呪い」をもたらす鮮烈な最後を遂げる万里昌代は、「ウルトラマンタロウ」にてつた怪獣バサラに血を吸われ殺されるマダム役でおなじみ。私の中で勝手に最も美しい殺され女優。