Cape Fear/1991/US
J・リー・トンプソンの『恐怖の岬』(1962)をマーティン・スコセッシがリメイク。バーナード・ハーマンのオリジナルスコアを転用(そのほか『引き裂かれたカーテン』の没トラックも使われている)して、そこから派生してか、撮影にフレディ・フランシス、美術にヘンリー・バムステッド、タイトルデザインにソール・バスを招請するなど、ヒッチコック・マナーに則ったクラシカルなスリラー映画を目指している。スコセッシのキャリアでは、代表作であり、時代のエポックメイキングとなった『グッド・フェローズ』の次にあたるが、ここでは古典的な「商業映画」の中で培ったテクニックを存分に詰め込んでみせた。マットペインティングやミニチュアワークなど往年の映像技術のショーケースのようでもあり、スタジオシステム時代の映画へのトリビュートでもある。
刑務所から出所してくるマックス・ケイディ(ロバート・デ・ニーロ)が、雷雲を背景にそのままカメラに突進してくるショットにぎょっとしつつも爆笑。全編をケレンとハッタリで引っ張り、見終わった後に本当に面白い娯楽映画を見た!と充足感が得られる。商業的にも成功し、スコセッシは『エイジ・オブ・イノセンス』や『クンドゥン』など自身の望む企画を進めることができた。
マックスがボーデンの娘のジュリエット・ルイスをグルーミングする場面は、デニーロの力が凄すぎて、キモさ通り越して、ちょっと異様なシーンに仕上がっている。ジュリエット・ルイス、まだ10代なので、今の感覚だと撮影自体が厳しいだろう。ただ映画の中でも突出した力があるのも確かだ。
ボーデン役は当初ハリソン・フォードにオファーしていたが、フォードはマックス役に関心を示していたらしく、実現していたら彼のその後のキャリアもかなり違ったものになっていただろう…という話を高橋ヨシキさんが話されていた。オリジナルキャストのグレゴリー・ペック、ロバート・ミッチャムのカメオ出演の配役も渋い。このリメイクからもすでに30年以上が経過。そろそろ勢いのある若手監督に、現在の感覚でリメイクしてほしいものだ。