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第307位『トイ・ストーリー』(ジョン・ラセター)

Toy Story/1995/US

ピクサー・アニメーション・スタジオの記念すべき長編映画第1作。ディズニー傘下の弱小スタジオが、決して潤沢とはいえない予算と人材、スケジュール、さまざまな困難を乗り越えて放った起死回生の1作は、結果的にその後のアニメーションの形式を変革し、親会社ディズニーを蘇生させ、今日の覇権の礎となった。『国民の創生』や『2001年宇宙の旅』などと並べて語られる歴史的な一作だろう。その後も絶えず技術的達成とシナリオの洗練を重ねた結果、さまざまな傑作が量産されていった。これまでにシリーズ4作が作られた『トイ・ストーリー』はそのまま、CG技術の進化史としての側面を持っている。
私が『トイ・ストーリー』に触れたのは、実は映画公開時にたまたま手に取った児童向けのノベライズ本だった。おもちゃには意志があり、子どもが目を離したすきに動き回っているというコンセプトは、小学校高学年になっても相変わらずおもちゃで遊んでいた私にとって非常に魅力的だった。プリンセス・ストーリーが連発され、ほぼ全てが恋愛を主題としていたディズニーにあって、ウッディとバズ・ライトイヤー(またはウッディとアンディ)の友愛を主軸に据えた物語も画期的だった。これは、その後の、ピクサー及びディズニー映画の方向性にも影響を与えたと思っている。ウッディとバズが、悪童シドの家から脱出するクライマックスの痛快なアクションと、ピンチに次ぐピンチには、本当に手に汗を握ったものだ。今、見返してもやはり『トイ・ストーリー』のシナリオは、よくできている。
しかし、私が何より心惹かれたのは、実はウッディでも、バズでも、ほかのおもちゃたちでもなく、シドのおもちゃたちであった。さまざまなおもちゃを切り刻み、組み合わせた異形の改造おもちゃに、独創性とインスピレーションを感じたのだ。すっかり魅了された私は、シドをまねて、自分のおもちゃたちを分解し、貼り合わせて、気味の悪い作品たちを量産したものだった。作中でシドの遊び方は恐らく推奨されていないし、シリーズを通しても、こうした改造おもちゃに光が当たることはなかった。でも、どう考えても、子どものおもちゃ遊びの本質を捉えているのはシドだとおもう。あのおもちゃたちが欲しいと今でも思う。